日本での働き方改革が叫ばれ、労働条件や労働環境も少しずつ改善されてきています。
しかし未だにブラック企業は存在し、知らずに入ってしまう方もいるのです。
せっかくいい環境で働きたいと思って転職しても、また転職しなければならないなんて思うのは嫌ですよね。
「ブラック企業に騙されたくない」「転職活動中に見分けるコツがあれば教えて欲しい」そう思う方もいらっしゃるでしょう。
そこで実際に自身で転職を3回経験し、また上場企業で採用担当として年間で書類選考3000件、面接500人を見てきた筆者が、4つのコツについてまとめました。
転職時にブラック企業を選ばないためにも、ぜひチェックしてみましょう。
この記事を読むとこんなメリットがあります!
- ブラック企業の定義や客観的な特徴がわかる。
- 給与情報からブラック企業を見抜き、避けられる。
- もしブラック企業に入社しても、確実に退職できる。
ブラック企業とは?まずそもそもブラック企業の定義を知っておこう
そもそもブラック企業と言われるけど、どんな定義があるの?と気になる方もいらっしゃいますよね。
この項目では実際に違反している例や、具体的に言われているブラック企業の定義を解説します。
どんな企業が該当するのか、客観的な項目を元に確認してみましょう。
ブラック企業とは?定義について
ブラック企業は、実際のところ明確な定義があるわけではありません。
しかし労働条件を扱う厚生労働省のホームページにて、下記のような特徴を挙げています。
厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として、① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などと言われています。
厚生労働省:労働条件に関する総合情報サイト 確かめよう労働条件
正確には定義がなされていないものの、上記のような特徴があると非常に心身を消耗しやすいです。
労働力を過剰に搾取し、見返りも非常に少ない上で間違った価値観を植え付けようとします。
ブラック企業の例を見てみよう
では実際に違反している例は、どんなものがあるでしょうか?
ブラック企業を調査している「ブラック企業大賞」より、2例を引用いたします。
1.株式会社 大庄(居酒屋チェーン「日本海庄や」)
ブラック企業大賞2014ノミネート企業一覧&選考理由
「日本海庄や」では、2007年に24歳の若者が過労死している。日本海庄やで働いていた吹上元康さんは2007年4月10日、新入社員として滋賀県大津市の「日本海庄や」石山駅前店の調理場に配属され、わずか4カ月後の8月11日未明、急性心不全により自宅で死亡した。
~中略~
大庄は初任給に過労死の労災認定基準(過労死ライン)である月80時間分の残業代を組み込んでおり、裁判では元康さんの死亡前4カ月間の総労働時間は1カ月平均276時間で、時間外労働は平均112時間だったと認定された。
2. JR西日本(西日本旅客鉄道株式会社)
JR西日本では2012年、28歳の若者(Aさん)が過労自死している。Aさんは大学院修了後の2009年に総合職としてJR西日本に入社、2011年6月から兵庫県尼崎市の工事事務所で信号システムの保安業務などを担当していた。そこでは昼夜連続勤務や休日勤務を繰り返し、同年12月以降は残業時間が毎月100時間を超過するようになった。自死直前の2012年9月には残業時間は月160時間を超え、その他の月でも最長で250時間を上回る残業をしていたという。
ブラック企業大賞2014ノミネート企業一覧&選考理由
このようにいずれも心身の消耗が激しい状態となり、著しく通常とは言えない精神状態へと追い込まれていきます。
過労死ラインには至らないものの、定められている労働・残業時間を超過し、継続的な圧迫感が行われている際は注意が必要です。
実際は入社しないとわからない場合が多い
実際のところ、入社前にブラック企業かどうかを判断するのは少し難しいです。
とくに初めての就職・転職を行った方は、どういう企業がブラック企業なのか基準を知らないでしょう。
自身の現状と客観的な状況を把握できる方ならともかく、多くの場合は入社先を正しいと思い込んでしまいます。
ブラック企業の手口として、下記のような圧迫を仕掛けてくることが多いです。
- 能力がない君でも働けるこの会社に感謝しなければいけない
- ほかの社員は寝る間も惜しんで働いている
- 成果が出ていないのは君だけだ
- 結果を残せていないのだから手当が増えないのは当然
労働力を必要以上に搾取するため、能力不足を当人のせいにしてしまいます。
その上で仕事を与えてくれる会社の優位性を示し、反発できないようにする状態です。
この状態で働いていると、身を粉にしてまで働きながら会社のせいにしない精神状態へと追い込まれていきます。

少しでもおかしいと思ったら誰かへ相談する
自分だけで判断ができないと思った場合は、少しでも誰かに相談するのが大切です。
同じ社会人の友人がいるなら、相談して自身の状況と照らし合わせてみましょう。
確実に一人で考え込んでいると、判断基準が会社と自分しかいないので改善はしにくいです。
もし相談できる友人や家族がいなければ、最寄りの総合労働相談コーナーを活用してみてください。
直接行くのが大変なら、労働条件相談「ほっとライン」に電話をするのもアリです。
- TEL:0120-811-610
- 月~金 17:00~22:00
- 土日祝日 9:00~21:00
- 12月29日~1月3日は受付不可
少しでも自身の状況を把握するために、必要な一歩です。相談するだけでも、今感じている心身の負担が軽減されますよ。
ブラック企業の見分け方!騙されないように求人情報から4つの特徴を読み取る
では実際にブラック企業を避けるべきポイントは、どんなものがあるのでしょうか。
ここでは求人情報から読み解く情報を元に、ブラック企業を見分けるコツを4つ紹介します。
- ポイント①給与
- ポイント②みなし残業の有無
- ポイント③募集文言の内容
- ポイント④募集人員
それぞれ詳しく解説していきますね。
求人情報から見るポイント①給与
給与は低すぎても高すぎても危険です。もちろん低い求人はそもそも相手にされにくく、転職をする上で魅力的ではありません。
そのため給与が低いのは問題がないものの、意外と高待遇に見える給与水準に引っかかってしまう方は多いです。
給与例や水準が異様に高い場合は、注意しなくてはなりません。
なぜなら不自然に高い給与水準の場合、厳しすぎるノルマや違法な労働時間で達成した際の水準かもしれないからです。
企業としても良い面を載せたいため、収入例でよく入社1年目で年収1000万のような掲載を出すことがあります。
しかし実際に勤めてみると、そのような収入を達成するためにはあらゆる偶然と莫大な労働力が必要になることがわかるでしょう。
とくに未経験や専門的な職種でも無い限り、給与が高すぎる例は避けたほうが無難です。
求人情報から見るポイント②みなし残業
みなし残業とは、もともと残業時間があるという前提で給与に組み込まれている仕組みです。
毎日定時で帰宅できれば、その分の給与は多くもらえます。しかし実際は残業時間が把握しにくい職種や、社風として定時退社が難しい場合も多いです。
そうすると「すでに残業時間は組み込まれているから」と、周囲の環境も合わせて麻痺しやすくなってしまいます。
例えば時給1,500円だったとして、毎日残業した場合の計算をしてみましょう。
- 残業分は時給の25%UP
- 月の所定労働日数は20日
- 2時間の残業を毎日した場合は40時間
正確に残業代を計算するなら、1,500円+25%UP分に40時間をかけると…75,000円となります。
実際に毎日2時間の残業しなければいけない環境で、みなし残業手当を30,000~50,000円もらっていたとしましょう。
であれば、25,000~45,000円損する計算です。違法労働につながりやすいため、しっかりチェックしておくべき項目となります。
求人情報から見るポイント③聞こえの良い募集文言
具体的に労働環境をイメージできる文言ではなく、抽象度の高い募集文言であれば注意が必要です。
例えば下記のような例が当てはまります。
- アットホームな会社、社風、職場環境
- 若手が活躍中
- 知識や経験よりも熱意を買う
- 妙に横文字を使って見栄えを良くしている
アットホームな会社というのは、悪く言えば雰囲気に馴染めない方はいづらい環境という意味です。
職場内の雰囲気が良い、仲が良いというイメージをさせて、実際には先輩からの無理難題に応えられなければ嫌な思いをすることも。
また若手が活躍中というのも、過剰な労働力を期待している一面が見えます。熱意については、ツラくて大変な業務も根性論で諭してくる場合が多いです。
そして一見見栄えの良い文言でも、実際の業務内容をイメージできなければ避けたほうが良いでしょう。
例)ハウスメンテナンスアドバイザー→実際は住宅改修の押し売り
求人情報から見るポイント④やけに募集人員が多い
もし成長中で大量の人員が欲しい場合なら別として、多くの場合人員をたくさん募集している場合は注意しておきましょう。
なぜなら職場環境に耐えきれず、辞めてしまう方が多いにも関わらず、環境を改善しようとしない場合が多いからです。
もちろん職務内容がハードであれば、その内容に見合った給与水準を設ければ定着は進むかもしれません。
しかしブラック企業の考え方としては、コストをかけて大量に採用してでも低賃金で雇える人材を欲しています。
最初から捨て駒同然で雇おうとする魂胆があるため、傾向としては募集人員が多い求人は注意して下さい。
また継続的に同じ企業から大量募集をかけているかどうかも、合わせてチェックしてみると良いでしょう。

ブラック企業に入ってしまったらどうすればいい?対策を踏まえて早めの転職が鍵
もし対策を講じていても、うっかりブラック企業へ入社してしまうことがあります。
その場合は速やかにどうするべきか情報収集を行い、行動を起こしていきましょう。
いつまでもあなたの大切な時間を浪費し続けるのは、1分1秒であっても許されません。入社してしまった場合はササッと切り替えて、次のステージへ臨みましょう。
思考停止せず早めに抜け出そう
どうしてもブラック企業へ入社してしまうと、思考停止がちになってしまいます。
- もう少し勤めていたら状況が改善されるかもしれない
- 待っていたらいい話が舞い込んでくるかも…?
- まだ転職したばかりだから、経歴に傷をつけるのはよくない
- もういい転職先はないかもしれない
いずれも転職したくない理由を正当化するためのもので、その先にある可能性を考えようとしていません。
確かにまた転職で失敗してしまう可能性はあるでしょう。しかし確実に、最初失敗したと感じた経験は次の成功へつながります。
例えば積極的に転職した方は、自分の望む労働環境や年収を獲得していける可能性が高いです。
けどブラック企業に残り続けた方の場合、いつまでも環境は改善されず徐々に疲弊していきます。
気づいたときにはもう無理ができない年齢に到達してしまうのです。
転職はできるだけ思い立ったら早いうちに行い、積極的に改善していく姿勢で臨むほうが良い結果が得られます。


事前準備を入念に行う
実際に退職しようと決めた際は、入念に準備をしておきましょう。ブラック企業の特徴として、辞職を伝えると取り合ってくれなかったり、風当たりが強くなったりします。
具体的には、下記4点の準備を行っておくと良いです。
- 就業規則の確認
- 有給休暇の確認
- 退職理由を考える
- 引き継ぎ事項をまとめておく
就業規則は辞職までの期間や、辞める際の手順が明記されています。伝える際は「しっかりと就業規則を確認し、その手順に則っている」と伝えましょう。
上司が「就業規則ではそんな辞め方は明記されていない」と、引き合いに出してくるリスクも抑えられます。
次に有給休暇を確認し、消化に努めて下さい。有給休暇は労働者の権利で、取得理由によって会社が拒否できるわけではありません。
そして退職理由は、できるだけ引き止めに合わないような理由を作っておくのが望ましいです。
すでに転職先が決まっていたり、家族の介護や看病を理由にしたりするのも良いでしょう。(その代わり嘘はバレないよう周到に準備しておく必要があります)
「退職するのに引き継ぎをしなければ、辞めさせない」と脅してくる可能性もあるので注意が必要です。事前に引き継ぎデータは作成しておきます。
難しいなら退職代行サービスもおすすめ
辞めますとハッキリ辞職の旨を伝え、退職届を渡しても受理してくれないことがあります。
長引かせることを目的としている場合、いつまでも退職できず揉めに揉めてしまうでしょう。
手っ取り早く退職代行を使えば、お金はかかるもののキッパリと退職が可能です。
もし有給休暇が消化できなかったとしても、代わりに交渉を行って取得してくれるよう話を進めてくれます。
面倒そうなことに巻き込まれてしまうと、せっかく次のステージへ進もうとしても足を引っ張られてしまいますよね。
そういうリスクや無駄なことに考えを巡らせるより、思い切って誰かへ任せてしまうのも手です。
ただし退職代行へ依頼する際は、低価格だからといって安易に依頼しないよう注意しましょう。
できれば事前に口コミで調べて、確実に退職できる実績のあるものを選んで下さい。

まとめ
ブラック企業の見分け方は、いくつか注意点があるもののそこまで難しくありません。
しかしいくら注意していても、うっかり目先の高待遇に釣られてしまうことがあります。
どんな状況でも冷静に情報を精査し、焦りがないようゆとりを持った状況で転職を行いましょう。
万が一ブラック企業へ勤めてしまった場合でも、辞めることは十分に可能です。
思考停止をして行動しないことに意味はありません。前向きに問題へ立ち向かえば、必ずあなたのキャリアプランは明確に描いていけますよ!